「言質」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。人質の言葉バージョンですね。つまり、その言葉を言わせることで引っ込みがつかなくなるということです。
この言質を使うことで、ビジネスでも上手く活用することができます。特に、営業の仕事をする場合や交渉事をする場合は、これは非常に有利になります。
この記事はこんな人におすすめ
- 交渉事を上手く進めたいけど、なかなか円滑にいかずに悩んでいる。
- 大好きな人をデートに誘いたいけど、何を切り出せばいいかわからない。
ん?2つめのやつ、なんですかこれ?
最後のほうになりますが、読んでいただけると、少しは手助けになるかと思います。
↓文章を読み上げてくれます(.WAV)
議論と言うと、自分の言いたいことを言った方が勝つように思われがちですが、現実にはそうではありません。議論に強い人は、的確なタイミングで的確な質問をします。その質問により、相手から言質をとってその先の議論に進んでいきます。
たとえば、アパレル店で商品を色々と見た後、買うのをやめようとしてうっかり、「色がちょっとねー。パールホワイトがあれば買うんだけどなー」などと言ってしまうと、「パールホワイトも残り1点ご用意できますよ!」と言われたとき、引っ込みがつかなくなってしまいます。
相手のこうした言葉を、質問によって引き出せばいいのです。
答えを引き出せるような質問を積み立てていけば、本当にそのものが出てきたとき(できるとき)には、断る理由、つまり反論の幅が狭くなって、承諾してもらえる可能性が非常にあがります。
もっとも、接客業の場合、お客様に対してあまり追い込んでしまうと気分を害してしまうこともあるので、表現には気をつけなければなりません。
相手の気持ちを一つ一つ確認するようなつもりで質問していくといいでしょう。
また、相手が仕事でミスしたとして、過去に自分が全く同じミスをしていたとしたら、その人に対して強く注意はできないことが多いですが、これも似たようなことです。言質ではないですが、自分の行動に縛られて、矛盾する行動がとりにくくなります。
おや、あなたはなぜ、そんなことがわかるのですか?それはその場にいたもの、つまり犯人しか知り得ないことだと思いますが・・・
というやつですね。
あくまでも交渉事を有利にすすめるための手段なので、雑談レベルの話しで「あのときああいったのに」と、言った言わないの問題に発展する可能性もあるので気を付けましょう。
子どもの頃を思い出してみると、あなたは親から「勉強しなさい」等と言われたことはありますか?
ない場合でも、アニメやドラマでは見たことがあるでしょうか。
勉強しなさいと言われれば言われるほど、子どもはやる気がなくなります。つまり、嫌なことを命令するのは逆効果ということです。
ですが、何も言わないのもそれはそれで将来が心配になります。
人間は、他人から押し付けられるのを特に嫌います。自然界の「作用・反作用の法則」が心の中でも働いて、押し付けられたのと同じくらいの力で反発します。
だから、「勉強しなさい」と言われると、同じくらいの力で「今やろうとした」「勉強なんてしない」と反発されます。
しかし、同じ結論でも、自分で考えたのであれば、なんとかその結論を実現したいものです。誰もが自分の出した結論を、しがみついてでも守ろうとします。
人間のこの性質を利用すれば、相手を動かすことができる。うまく質問をすることで、その結論が相手の発案だと思わせればいいのです。
ポイントは「もし、自分だったら、どのようにされたら動く気になるだろうか?」と考えてみることです。その思考をたどるように質問を組み立てていきます。
たとえば、給料が安いのに仕事が多すぎると文句ばかり言っている同僚がいます。この同僚を前向きに仕向けるには、どのように質問をすればよいでしょうか?
あーあ、この会社、仕事は多いし給料は安いし、上司も働かないし。
なんなんだよ。
この会社、いったいどんな人が昇進していくのかな?
そりゃあ、会社のためにガンガン働く忠誠心が高い人だろうよ。俺には無理さ。
昇進すると給料も増えるよね。昇進すればいいんじゃないの?
この会社、昇進すれば年収2000万円も普通だし。
そうだけど、昇進なんて無理無理無理。やる気もないし~。
え、でもガンガン働く人が昇進できるんだよね?
こんな安月給でガンガン働くなんて無理だし。
給料を上げれば働くけど、あげなければ働かないということね・・・
ふーん、じゃあ、会社は先に給料を上げてガンガン働くのを待つと思う?それとも、ガンガン働いて結果を出したその人の給料を上げると思う?
そんなの、ガンガン働いて結果を出した人を評価するだろうさ。
この太田という同僚は、実に自分勝手な観点で物事をとらえています。(大きな職場なら一人や二人はいるかと思います。)
「もっと働かせたかったら、給料を上げる」と。ですが、給料を上げるかどうかは会社次第です。給料を上げて欲しかったら、自分視点をしてて、会社視点に切り替える必要があります。
この視点に切り替えた時、「会社は、給料以上の働きをする人の給料を引き上げる」というごく普通の当たり前なことに気づきます。
質問することによって、この点を気づかせれば、今までとは言動が変わってくることは間違いないかと思います。
余談ですが、本当に仕事と給料の対価があってないと感じたら、転職活動をすることをお勧めします。転職市場で自分の能力が他社ですごく必要とされていれば年収アップにつながりますし、もしどこにも必要とされてなければ、自分のことを見直してみたほうがいいでしょう。
ちなみに、裁判では禁じられている質問法があります。それが「誘導尋問」です。
そしてさらに、誘導尋問の中に「誤導尋問」と呼ばれるものがあります。
たとえば、証人がその日、コンビニに行ったかどうかが重要である場合には本来、
「あなたは、その日にコンビニに行きましたか?」と聞いて、「はい」という答えを聞いてから「そのコンビニで何をしましたか?」と聞かなければなりません。
しかし、「誘導尋問」では初めての質問を省いて、「あなたはコンビニで買ったうまい棒をどこに捨てたのですか?」というように、コンビニに行ったことを前提にします。
このような質問は、記憶と異なる前提をすべり込ませるため、記憶とは異なる証言を引き出しやすく、裁判では禁止にされています。つまり、それほど強力なテクニックだということです。
このテクニックは当然、日常生活でも使えます。
たとえば、セールに日にスーツを買いに行って、買おうかどうか迷っているときに「どのスーツにしますか?」と聞く代わりに、「ちなみに、お支払方法はどうなさいますか?カードですか?現金ですか?カードならポイントと5%オフがついていますよ」というように、顧客の思考を「支払いは現金か、カードか」にもっていきます。これも誘導尋問のテクニックです。
友達を遊びに誘ったり、デートに誘う時にもこの方法は使えます。遊びやデートを前提にすることで、その日の予定を質問して聞き出していくのです。
こういう巧みな誤導尋問を有効に活用とするとともに、逆に警戒も怠らないことが必要です。
ただ、やりすぎると、「強引」と思われたり、そもそも嫌いな人からそんなことを言われたら「なんで一緒にいる前提なの?」と逆質問されるので、適切な場面で使うようにしましょう。
私だったら「は?あんたとデートになんのメリットがあんの?
自分の立場わかってる?私を楽しませることできるの?」って聞き返しちゃうかな~
まぁ、誘われ慣れている人なら、断るのもまた上手ですからね。
相手にどうしても承諾を得たい場合は、言質を取れるような質問をしていくといいでしょう。一度言ったら引っ込みがつかなくなるような言葉のことを指します。
また、人間は基本的に押し付けられることを嫌うので、特に嫌なことを命令されるのは嫌います。そこで、質問を使うことで、命令ではなく、自分から気づいてもらうように仕向ける必要があります。
この辺りのレベルの質問は、上手に使えば有利になりますが、使い方を間違えると自分が傷つくことにもつながります。質問をするタイミングと場所を、よくよく考えておきましょう。
ここからは、このシリーズのまとめページに飛びます。
随時更新していきます。
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