この記事はこんな人におすすめ
- 高地トレーニングを実践してみたいけど、そんな場所にいけずに悩んでいる
- 持久力はつけたいけど、過酷なトレーニングはやりたくない
- トレーニング前に摂取した方がいい食べ物や飲み物を知りたい
運動ではどのように負荷をかけるかも大切です
高地トレーニングや高強度トレーニングという言葉は運動をしている人なら聞いたことがあるでしょう。
トレーニング効果を上げるための手法ですが、場所や時間、過酷さといった課題が残るため、一般人には馴染めません。
それに代わる手法として、息を止めながら運動をするというトレーニングをすることで、高地トレーニングや高強度トレーニング効果を再現し、運動パフォーマンス向上につなげることができます。
このブログは、以下の書籍を参考に、自分の考えと経験を加えながら書いています。
アメリカ・オリンピック・トレーニングセンターによると、オリンピックアスリートの運動能力の差は0.5%にも満たないそうです。
選手やコーチは、各アスリートの能力が拮抗しているため、その他の方法で差をつけようとするわけです。
発揮する方法の1つは、短期間だけ意図的に酸素の少ない環境に身を置くことです。
高地や息を止めるなど、酸素の少ない環境に身をおくと、体がその環境に適応し、体内に酸素が取り込まれる能力が通常よりも上がります。
これは、運動選手でなくても同じ効果を発揮します。
要は、少ない努力で大きな効果を発揮できるのです。
競技ではよく、ドーピングに気をつけようという話が出てきます。
ドーピングの1つとして、血液ドーピングがあります。
大会の数週間前に自分の血液を採取し、冷蔵(冷凍)保存します。すると、体は血液の量が減ったことを感じ、いつもより多めに赤血球をつくります。
そして、大会の1~7日前、採取した血液を自分に戻します。
戻した分の血液の分だけ赤血球が増えるため、最大酸素摂取量が向上して持久力が高まります。
他にも、EPO製剤を使用して赤血球を血中に増やす、という方法もあります。
競技によっては、過酷な環境下に身を置くことになります。しかし、違法行為は違法行為です。
楽をして勝つのではなく、正しい状態で試合に臨みましょう。
ドーピングをした代償は、スポーツ界からの追放など、決して安くはありません。
ドーピングは、ダメ。ゼッタイ。
薬物使用と同じ犯罪行為と認識しましょう
スポーツの未来にとっても、ドーピング文化は少しずつ変わっています。
アスリートの大半は、倫理的に問題のある血液ドーピングは行っていません。
その代わり、彼らは高地トレーニングなどの方法で、肉体の酸素運搬能力を自然に高めようとしています。
つまり、合法的な方法で、赤血球の数を増やすのです。
息を止めるエクササイズを行うと、腎臓で生成されるEPOの量が増え、脾臓から赤血球が放出されます。
そして、血液の酸素運搬能力が高まり、合法的な手段でパフォーマンス向上を目指せます。
最大酸素摂取量の値は、体重1キロあたりの1分間の酸素摂取量を表しています。
最大酸素摂取量は、その値が大きいほど運動を長時間続けられるので、持久力や心肺機能を測るのに最も適した数字です。
自転車、水泳、マラソンなど、高度な持久力が必要とされるスポーツでは、トップアスリートだと最大酸素摂取量の値は通常のアスリートよりも大きいです。
持久力の向上は、最大酸素摂取量の向上であり、血液の酸素運搬能力を高めることで達成できます。
血液を作るには、食事も不可欠ですね
余談ですが、アスリートにとって、食生活もトレーニングになりますね
最大酸素摂取量を高めるためのトレーニングをするには、基本的な知識を知っておきましょう。
まずは血液です。
血液は3つのパートで構成されています。
〇赤血球
〇白血球
〇血漿(けっしょう)
ヘモグロビンはタンパク質で、赤血球の中になります。
ヘモグロビンの機能は、肺から酸素を受け取り、細胞、組織、臓器に届けることです。
酸素が体内に放出されると、燃焼によってできた二酸化炭素をヘモグロビンが集め、肺に持っていきます。
そして、肺から呼吸によって体外に排出されます。
男性のヘモグロビン数・・・13.8~17.2gm/dl
女性のヘモグロビン数・・・12.1~15.1gm/dl
※gm/dl=1デシリットルあたりのグラム
この他に、「ヘマトクリット値」と「ヘモグロビンの酸素飽和度」という数字です。
ヘマトリック値は、血液中に占める赤血球の割合を表しています。
通常であれば、血中ヘモグロビン濃度とだいたい一致しています。
ヘモグロビンの酸素飽和度は、ヘモグロビンの酸素運搬能力を表す数字です。
この運搬能力には上限があり、その最大量をどの程度まで活用しているかによって、ヘモグロビンの酸素飽和度が決まります。
男性の平均的なヘマトリック値・・・40.7~50.3%
女性の平均的なヘマトリック値・・・36.1~44.3%
動脈を流れるヘモグロビンの酸素飽和度・・・通常は95~99%
酸素飽和度は、通常時でほぼ最大限使っているんですね
貧血だと、この酸素運搬能力が激減するので、疲れやすくなるんですね
伝統的な高地トレーニングでは、選手が高地に暮らし、高地トレーニングを行います。
酸素が少ない環境に体を慣れさせ、血液の酸素運搬能力を高めることが目的です。
現在でも、ケニアやエチオピアのランナーなど、高地に住むアスリートはこの方法でトレーニングを行っています。
しかし、高地トレーニングには重大な欠点もあります。
酸素の少ない状況では抵抗が生まれるために、最大の運動量でトレーニングができません。
その結果、運動量が減るため、筋力が落ちることにつながります。
高地トレーニングのメリットを保ちながら、欠点を最小限に抑える方法として、テキサス大学のベンジャミン・レイヴァン博士とジェームズ・ストレイ=ガンダーセン博士が、1990年代に「高地で暮らし、低地でトレーニングする」というモデルを開発しました。
それは、標高2500Mという中度の高地で生活し、トレーニングは1500M以下で行うという方法です。
高地に暮らすことで血液の酸素運搬能力を高め、低地でトレーニングを行うことで、筋肉の運動量を減らさない狙いがあります。
レイヴァン博士とガンダーセン博士は男女の学生長距離ランナー39人を対象に研究を行いました。
被験者のフィットネスレベルは大体同じとします。
ランナーは次の3グループに分けました。
1 低地で暮らし(標高1500M)、低地でトレーニング(標高1500M)
2 高地で暮らし(標高2500M)、低地でトレーニング(標高1250M)
3 高地で暮らし(標高2500M)、高地でトレーニング(標高2500M)
結果、グループ2のランナーたちは、赤血球の量が9%増え、最大酸素摂取量が5%増えました。
5000M走でも、タイムが平均13.4秒早くなるという好結果が生まれました。
海面レベルに戻り、最大酸素摂取量と5000M走の両方結果が出たのが、グループ2だけだったようです。
ナショナルチームの長距離選手を対象にした調査でも、同じような結果が出たそうです。
トップアスリートの世界では、このわずかな差が大きな差につながります。
数%の結果の違いが、オリンピックの金メダル、世界新記録につながるようになるのです。
限界近いと思っていた自分が、まだ成長できる余地があると実感できるんですね
一般的な人は、もっと結果が違うでしょう
高地トレーニング以外にも、高強度トレーニングという方法もあります。
短時間だけ運動強度を最大限上げ、極限まで体を酷使する方法ですが、かなり過酷な内容です。
運動強度による効果の違いは、これまで数多くの研究がおこなわれています。
中強度トレーニングに比べると、高強度トレーニングは、有酸素運動としても無酸素運動としても高い効果が認められています。
有酸素運動は持久力を高め、運動時に体に酸素が十分行きわたるので長時間続けられます。
無酸素運動は筋力やスピードを鍛えることが目的で、短時間のトレーニングでパフォーマンス向上を目指します。
田畑泉先生は、中度から高度までさまざまな強度のトレーニングを比較する研究を行いました。
高強度のグループは、タバタ式トレーニングと呼ばれる、一度に20秒間だけ、全力を出して最高の強度エクササイズを行う手法です。
結果は、タバタ式トレーニングは持久力も筋力も向上しました。(中度は持久力のみ)
別の研究では、高強度の短距離走トレーニングと、低強度の持久走トレーニングを比較し、酸素摂取量と筋肉の脱炭素化を計測しました。
結果は、高強度のグループはVO2キネティクスが早くなり、高強度の運動にも耐えられることがわかりました。
※VO2キネティクス:止まった状態からいきなり全力で動いたとき、酸素供給量が運動量に追いつくまでの時間
トレーニングによって動いている筋肉の酸素化が促進されると、運動中の乳酸の生成が減り、運動後の回復にかかる時間も少なくなります。
高強度のトレーニングをまとめると、次のようなメリットがあります。
- 有酸素・無酸素の両方のエネルギー供給システムが向上し、持久力、筋力、スピード、パワーの上昇
- VO2キネティクスが速くなり、血液がよりたくさんの酸素を筋肉に運べる
- 高強度エクササイズの耐性が上昇
- 最高強度に満たない強度のトレーニングで、回復までの時間が短縮
- 運動時の乳酸の蓄積を抑える
- 動いている筋肉の酸素化が向上、より強度の高いトレーニングを長く続けられる
よっしゃ!これで俺もスポーツ万能になれる!!
高強度のトレーニングは過酷なので、できれば付き添いが欲しいですね
高地トレーニングは、たとえばケニアなどの標高の高い国に暮らすアスリートなら手軽にできます。
ですが、日本は山国とはいえ、トレーニング環境が整っている場所はそう多くありません。
ちなみに、岐阜県に『飛騨御嶽高原高地トレーニングエリア』があります。合宿など、一時的に強化したい場合は向ていますが、日常的に行えません。
しかし、住んでいる場所や健康状態に関係なく、誰もが高地トレーニングや高強度トレーニングを行える方法があります。
それは、いつものトレーニングに息を止めることを加える方法です。
次のような効果があります
・脾臓(ひぞう)から赤血球が放出され、有酸素パフォーマンスが向上
・EPOが自然に生成
・二酸化炭素耐性が高まる
・精神的な備えができる
・回復期間の短縮
・乳腺の減少
・安静時やケガでトレーニングができないときもフィットネスを保てる
日常的に行うことができるので、トレーニングの効率化を図ることができます。
脾臓は、血液の銀行のような役割を果たす臓器です。
体から「酸素が足りない」という信号が出ると、脾臓は貯蔵していた赤血球を放出します。
脾臓は、血液のヘマトクリット値(血液中の酸素の割合)と、ヘモグロビン濃度を正常に保つのに必要な存在です。
赤血球を放出し、血中のヘモグロビン濃度が上がると、運動時の筋肉がより多くの酸素を送れます。
医学的な理由によって脾臓を抽出した人たちを対象にした実験では、血液の構成を変えるうえで脾臓が重要な役割を果たしていることがわかりました。
短時間だけ息を止めるトレーニングを繰り返したところ、脾臓が正常に機能している被験者は、ヘマトクリット値が6.4%、ヘモグロビン濃度が3.3%上昇しましたが、脾臓のない被験者は血液の構成に変化がなかったそうです。
わずか5回息をとめるだけでも、脾臓があるおかげで、血液の酸素運搬能力が飛躍的に向上するということです。
息を止めるトレーニングは、誰でもできることが最大のメリットです。
激しい運動と違い、体にも負担をかけません。
限界まで息をとめるのを3~5回繰り返すことで、ヘモグロビン値が2~4%上昇します。
トップアスリートなら、この差は大きくなりますし、運動していない一般人でも、実感しやすいでしょう。
息を止めるって、簡単にできるけど普段なかなかしないよね
運動中にやる場合は、くれぐれも倒れな程度にやりましょう
息を吐いた後に息を止めると、血液の酸素飽和度が下がり、高地トレーニングの効果を再現できます。
息を止める前にゆっくりと息を吐くと、肺の中の空気が減り、二酸化炭素が速く蓄積してより強い反応がでます。
息を吐くと息を止めていられる時間は短くなるが、息を吸ってから止めるよりも二酸化炭素の量が多くなり、ヘモグロビン濃度も10%ほど高くなります。
血中の二酸化炭素が多くなると、脾臓の収縮も大きくなり、赤血球の放出も増え、血液の酸素化も促進されます。
血中の二酸化炭素が増えると血液のpH値が下がり、ヘモグロビンから酸素が放出されて組織に送られ、血液の酸素飽和度が下がります。
息を吐いてから息を止めるのは、一酸化窒素が排出されずに肺の中に入る利点も活かされます。
息を吐いてから息を止めると、一酸化窒素が蓄積され、呼吸を再開したときに、蓄積された一酸化窒素が肺に吸い込まれます。
高地に行けない場合は、息を止める、ということを覚えておきましょう
重曹(じゅうそう)はアルカリ性の物質です。
運動をすると血液が酸性に傾きますが、アルカリ性である重曹を摂取することで、酸度を下げて持久力を上げる効果がでます。
重曹は塩の一種であり、天然のミネラルウォーターに溶け込んでいます。
家庭にも常備されていることが多く、料理、掃除、洗濯など、幅広い用途で活用されてます。
そんな重曹は、摂取することで血液のpH値を正常に保つ働きをします。
ちなみに、潰瘍、虫刺され、歯周病などにも効くというそうです。
息を止めていられる時間が長くなると、運動中の息切れが軽減されるという利点があり、最大酸素摂取量も上昇します。
そこでトレーニング前に重曹を摂取すると、息を止めていられる時間が8.6%長くなることがわかっています。
重曹を摂取すると、次のような効果があります
・持久力の向上
・息を止めていられる時間が伸びる
・息切れの減少
・出せる力の平均値が高くなる
・副作用がない
重曹は、トレーニングの1時間前に摂取しましょう。
ただし、摂りすぎないように、小さじ2分の1程度にとどめ、水や大さじ2のお酢に混ぜて飲むといいでしょう。
運動を続けていると、少しでも成果を上げたく、もっと結果を出したくなります。
今回は、トレーニング方法を変えると、いつもと違う効果が出ることが伝われば十分です。
量よりも、質も重視することで、トレーニング効果を上昇することにつながります。
努力は大切ですが、正しい努力のしないと報われません。
呼吸法についてのまとめです。
- ドーピングなど、非合法な手法は絶対にダメ
- 合法的な方法で、パフォーマンスを上げる
- 正しいトレーニングを行うには、知識も不可欠
- 高地トレーニングは持久力がよく伸びるが筋力が付きにくい
- 高強度トレーニング(タバタ式トレーニングなど)は筋力、持久力、パワー、スピードが伸びるが過酷
- 息を止めるトレーニングで、疑似的に高強度、高地トレーニングを再現できる
- 重曹を摂取することで、疲労回復、持久力の向上が期待できる
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